「枕草子」(清少納言・角川書店編)

平安時代の超人気ブロガー・清少納言

「枕草子」(清少納言・角川書店編)
 角川文庫

「竹取物語」は面白い。
「源氏物語」も面白い。
「奥のほそ道」も面白かった。
でも、
本書「枕草子」は面白いと
思えない時期がありました。
いざ読み始めると
途中で飽きてくるのです。
続けて読むことができず、
挫折したことが
一度や二度ではありませんでした。

あるとき気が付きました。
これは通して読むようなものでは
ないのではないか。
そう思って本書を
手の届きやすい棚に置き、
折にふれて気に入った部分を
読むようにしました。
そうしたらその面白いこと。
「枕草子」の楽しさを
すんなり受け入れることができました。

「枕草子」の楽しさ①
率直な感情のほとばしり

「すさまじきもの」
(期待はずれでしらけてしまうもの)、
「心ときめきするもの」
(胸がどきどきするもの)、
「にげなきもの」
(似合わないもの)など、
自分の感情をまずは
前面に出している章段が多く、
ついつい「そうだよね」と
思ってしまいます。

「枕草子」の楽しさ②
リズミカルな言葉の調子

「すさまじきもの。
 昼吠ゆる犬。
 春の網代。
 三、四月の紅梅の衣。
 牛死にたる牛飼ひ。…」

一文がことのほか短いのです。
「源氏物語」とは大違いです。
テンポ良く読めます。
だからすっきり言葉が
心に入ってくるのです。

「枕草子」の楽しさ③
五感を駆使した情景描写

「春は、曙。
 やうやう白くなりゆく、
 山際すこし明かりて、
 紫立ちたる雲の細くたなびきたる。」

日本人なら誰しも
中学校時代に暗唱させられた一文です。
今なら分かります。
これは極めて美しい名文なのだと。
全編にわたってこうした
秀逸な情景描写がみられます。

そうです。これは清少納言が
平安時代に綴ったブログなのです。
それも相当インテリジェンス。
品を落とすことなく
自分の感情を素直に綴り、
短文や体言止めで
シンプルな文章構成にし、
自身が味わった美しい情景を
的確に読み手の前に提示する。
人気の出るブログの条件を
完璧に押さえてあるのです。

そうか、自分は今まで「枕草子」の
読み方を間違えていたのか。
誰かの書いたブログを
始めから終わりまで読んだら、
それは飽きるに決まっています。
自分の気分に合わせて、
読みたいところを読めばいいのです。

本書は「枕草子」入門書。
全文は掲載されていません。
ここから始めて、次は全文に挑戦です。

(2020.2.8)

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